綺麗に死ぬITエンジニア

ITエンジニアがすぐに辞めてしまう会社の特徴

2015-12-25

これまで、エンジニアに全く好かれないそうそうたる会社たちを見てきました。エンジニアに好かれず、すぐに辞められてしまうIT企業というものは、どんなに安定的な収益源・顧客を抱えていても、事業そのものが安定することはありません。

事業を継続するのには、相当な労力が必要です。システムを作って納品してはい、終わり!で済むほどプロジェクトというものは甘くはないのです。大概、開発した当初想定しえなかった工数というものが発生したり、保守コストが大量にかかったりするものです。

そんな最中、社内でエンジニアの急な退職に起因したトラブルが発生し、その対応を強いられたエンジニアまでもが嫌気がさし退職してしまう。また、エンジニアの退職というものを身近に体験し、しかもそのエンジニアが退職後に成功している話を聞き、自らも退職したくなってしまう。そういった負のスパイラルが、魅力の少ないIT企業には起こりがちです。

今回は、具体的に一体どのようなIT企業が、そういった現象に陥りがちかを、実体験を元に綴りたいと思います。

ITエンジニアにとっての魅力

どんな企業がエンジニアに嫌われるかを考える前に、エンジニアは果たしてどんな企業を好く傾向にあるのかを考えてみます。

私がこれまで見てきたエンジニア達は、以下のうちのどれかもしくは複数が満たされることを望んでいました。

  • 好きな技術を好きなだけ突き詰められる
  • 製品の世の中への貢献度が高い
  • 自分が成長できる環境である
  • 信頼/尊敬できる仲間がいる
  • 給与が高い
  • 時間的拘束が少ない
  • リモートワークや在宅勤務など自由な働き方ができる

価値観は人それぞれですが、逆を言えば、これらのうち一つも当てはまらないような企業には、優秀な人材が集まらないのは当然のことです。そんな企業では、その企業でしか雇ってもらえないような人材ばかりが集まり、その結果、優秀な人達は更に離れたがる環境の出来上がりです。

というのも、先に挙げた条件を満たしているかどうかをすぐに判断するには、所属しているエンジニアが優秀かどうかを見ればいいのです。

魅力的な企業には、魅力的なエンジニアが集まり、結果、更に魅力的な企業となるからです。逆に、魅力的ではない企業は、魅力的なエンジニアが早々に見限って抜けていきますから、どんどん魅力的ではない企業になっていきます。

つまり、これが結構両極端になってしまうのです。

魅力的な企業は、本当にみんなが憧れるような魅力的な企業へと成長し、名も売れ、売り上げを伸ばします。しかし、魅力的ではない企業は、ブラック企業と呼ばれ、サービス残業をしなければ経営が立ち行かなくなるほどに落ちこぼれます。

この格差が非常に大きく、そのことを多くのエンジニアの人達は実体験から知っていますから、更に多くのエンジニア達は魅力的な企業を目指し、魅力的な企業の倍率は更に上がる、というサイクルです。

よって、先の条件が満たされるかどうかというのは、魅力的な企業となり得るかどうかの大きなボーダーラインとなっており、一歩間違えれば簡単に地の底まで堕ちてしまうのです。

エンジニアにとっての苦痛

先に挙げたエンジニアにとっての魅力を、そのまま裏返せば、エンジニアにとっての苦痛になり得ます。

例えば、好きな技術を好きなだけ突き詰められないというのは、使いたくもない貧相でレガシーな技術を使うことを強いられるということですが、そんなのはエンジニアそのものとしての存在価値ややりがいを著しく奪う行為に等しく、辞められて当然です。

また、時間的拘束が多く、新しい技術について学習する時間すら取れないというのは、社内の業務しかできない無能なエンジニアを量産する行為に他ならないため、優秀なエンジニアからどんどん流出していくことになるでしょう。

大抵人間というものは、1つや2つのことなら我慢できます。しかしながら、これらの要因が3つ4つと重なってくると、他のもっと良い職場を探す理由になることでしょう。「離婚の原因は一言では言い切れない」というのと、同じことです。

新卒を雇う企業

しかし、新卒ばかりを採用する企業というものは、前述とは少し訳が変わってきます。離婚で言えば、大昔の、「周りが全く離婚しない環境では、離婚するという選択肢すらない」といった感じしょうか。お見合いで結婚して、そのまま生涯連れ添う、みたいな。

これと同じ理論で、新卒ばかり採用するブラック企業は、現代の標準から見ると本当に異質です。もはや、宗教の域です。辞めるという選択肢を持たない純粋な若者を、洗脳していきます。それも、既に洗脳されている先輩社員によって。

しかしながら、近年ではインターネットが普及し、優秀なエンジニアは自分の市場価値をネット上で測れるようになりました。つまり、こういう企業であっても優秀な人材は流出しますから、今後は結局衰退していく運命にあるでしょう。やったね。

企業にとって大切なのは、顧客よりもむしろ社員

前に勤めていた会社で退職を申し出たとき、私は上司にこう言われました。

俺はお客様が大事だから、お客様に迷惑をかけたくない。

お前に辞められると、お客様に迷惑をかけてしまうかもしれない。

だから、辞めないでくれ。

私は思います。IT企業では、客が大事だからこそ、最も重要視すべきなのは社員なのではないかと。客へのサービス向上よりも前に、社員への還元をすべきなのではないかと。

社員が辞める最後の最後まで、客のことしか考えないなんて会社に、果たして未来はあるのでしょうか。

まとめ

組織作りというのは非常に大変なことです。良くない人材ばかりが残ってしまうと、良くない人材ばかりが集まってしまう。けれど、だからといって良くない人材を粗末に扱うと、ブラック企業になってしまう。

せめて、今いるエンジニアを大切にする世の中になってほしいものです。

筆者について

フリーランスエンジニアとして活動している、「もりやませーた」です。

筆者のTwitterはこちら。記事に関するご意見等はTwitterの方へお寄せください。

その他業務に関するお問い合わせは、こちらのページをご覧ください。

労働関係