ChatWorkのサービス品質保証(SLA)がおかしい
2017-01-31
何かと近年、ビジネス上のやりとりに、ChatWorkを使う機会が増えてきています。
使っている方ならわかると思いますが、このChatWork、たまにサーバーがダウンしたり、そこまでいかなくても繋がりにくくなったりといったことが、まああります(数ヶ月に1度くらい)。それで業務上、致命的なダメージを受けたことはありませんが、そのときに行っていた業務が遅延したことは何度かあります。
先日たまたまChatWorkのプラン一覧を見直したところ、昔はなかった(違う名前だった?)エンタープライズプランなるものが追加されており、そのプランの特典の一つにSLA(サービス品質保証)がありました。
SLAは、簡単に言えば、「1ヶ月で特定の時間以上サービス停止したら、いくらか返金するよ!」という制度のことです。
常日頃からChatWorkは落ちることがままあるサービスだという認識だったので、これはもしかしたら導入の価値があるかも!と思い紹介ページを見てみたところ、思いのほか闇が深く、名ばかりのSLAだったので、間違って契約してしまう人がいなくなるよう、ここで一つ注意喚起しておきます。
ChatWorkのサービス品質保証(SLA)
2017年1月現在、ChatWorkのサービス品質保証(SLA)紹介ページに記載されているSLAは、一部抜粋すると、以下のような内容になっています。
保証基準値および返還率
1カ月当たりの稼働率が保証基準値を下回った場合、下表の通り月額料金の一部を返還いたします。
保証基準値 | 返還率 | |
---|---|---|
サーバ稼働率 | 99.9%以上 | なし |
99.9%未満 | ユーザー利用料の10% |
除外事項
- メンテナンス作業に伴うサービスの中断(計画、緊急問わず)
- お客様(利用者)が契約約款または法令などに違反したことによる場合
- お客様の環境、または本サービス設備以外の不具合による場合
- 第三者からの攻撃、妨害による場合
- 原因の如何を問わず、障害が継続した時間を測定できない場合
- 火災、停電などにより本サービスの提供ができなくなった場合
- 地震、噴火、洪水、津波などの天災により本サービスの提供ができなくなった場合
- 戦争、動乱、暴動、騒乱、労働争議などにより本サービスの提供ができなくなった場合
- そのほか運用上あるいは技術上の理由により、ChatWorkが本サービスの一時的な中断が必要と判断した場合
料金返還について
料金返還には、お客様からの申請が必要です。
除外事項が酷すぎる
このSLAにおいて違和感を覚えたのが、「除外事項」の部分です。一つ一つの項目が、なんというかサービス提供者側有利すぎて、もはやこのSLAは意味のない制度になっています。
まず、「メンテナンス作業に伴うサービスの中断(計画、緊急問わず)」。計画メンテナンス(予告あり)以外の、予告のない緊急メンテナンスであっても、SLA対象外だそうです。こんなのがまかり通っていたら、サービスが停止した直後に緊急メンテナンス発令してしまえば、SLA関係なくなりますよね。
次に、「第三者からの攻撃、妨害による場合」。これは意見が分かれそうなところですが、クライアントからしてみれば、第三者から攻撃を受けたかどうかなんてのは全く関係のないことです。責任は間違いなく、サーバーのセキュリティ対策やパフォーマンス管理ができていないサービス提供者側にあるわけで、いかなる場合も「攻撃だったら即!免責!」というのは、都合が良すぎる気がします。
そして、「原因の如何を問わず、障害が継続した時間を測定できない場合」。これは明らかにおかしいですね。障害が起きても、障害が起きた時間が測定できていなかったら、それは障害じゃない!って言ってるということですよね。明らかにサービス提供者側の過失なのに。また、「原因の如何を問わず」なので、仮にChatWork側が故意に証拠隠滅を図って測定しなかった場合であったとしても、利用者は何も言えないということですね。
最後、「そのほか運用上あるいは技術上の理由により、ChatWorkが本サービスの一時的な中断が必要と判断した場合」。曖昧すぎますし、理不尽すぎますね。ひどい。そのまま受け取るとすると、例えば、アプリケーションの不具合によりサービスが止まってしまったとき、ChatWorkがサービスの中断が必要だと判断したら、それはSLA対象外ということになる、ということですよね。アプリケーションの不具合なのに。
その他の項目は、よくあるSLAの内容だと思いますが、上記4つが酷すぎます。
もはや、逆にどんな障害だったらSLA対象内になるのか、私にはわかりません。どんな障害でも、解釈次第で、必ず除外事項に含まれてしまうと思うのですが。
ChatWorkのSLAは、サーバ稼働率99.9%未満で返還なので、だいたい43分/月くらいの停止で返還です。上記の除外事項を言い訳にいくらでも逃げることができるので、万が一43分を超えたら逃げよう!ということなのですかね。そうやって疑われても仕方ないくらい、ひどい除外事項です。
予想ですが、この除外事項は恐らく、1対1の企業間で締結する契約書の免責事項欄からコピペしたものなんじゃないかと思います。じゃなかったとしたら、クラウドサービスの、しかもSLAの免責事項にしては酷すぎて、書いた人の神経疑います。
まとめ
SLA目当てにエンタープライズプランを選ぶ人はいないかとは思いますが、それでも大事な1特典です。よく内容を検討してから導入しましょう。
少なくとも、2017年1月現在、エンタープライズプランを選ぶ際はSLAはないものとして考えた方が良さそうです。