綺麗に死ぬITエンジニア

あなたはネットで正しい日本語使えてますか? Webメディアと正しい日本語表記の話

2015-01-11

日本最初のWebサイトは、1992年9月30日に公開されたらしいです。私より数か月だけ、年下です。驚きです。

さて、パソコンやインターネットの普及によって、それ以前の時代とは打って変わって、みんなが文章をコンピューターで書く時代になりました。また、それをインターネット上で公開したり、そこまでいかなくても外部の人に渡したりする機会も多くあるかと思います。TwitterやFacebook、今の時代はメールじゃなくてLINEとか……。

今回は、パソコンやスマホで日本語を書く際の、正しい表記ルールについて、備忘録としてまとめます。

サーバ? サーバー? 外来語の表記ゆれ

サーバ/サーバーに限らず、コンピュータ/コンピューターなど、様々な外来語の語句で、どちらの表記を使えばいいか迷うことがあります。このような、同じ音で同じ意味の語句について異なる文字表記がなされることを、表記ゆれといいます。

外来語の表記ゆれに関しては、様々な意見があり、結論からいうと、どれが正しいといった決まりはありません。ただ、同一文書内や同じ会社内では同じ表記をして、統一性を持たせるというのがルールになっています。

なお、日本工業規格のJIS Z8301規格では、外来語の表記について、要約すると以下のようなルールを定めています。

  • 以下の仮名は、外来語を原音に近く書き表そうとする場合を除き、使用しない。 例: ヴァイオリン → バイオリン
イェ
ウィウェウォ
クァクィクェクォ
ツィ
トゥ
グァ
ドゥ
ヴァヴィヴェヴォ
テュ
フュ
ヴュ
  • 英語の語末の -er, -or, -ar などは、ア列の長音とし、長音符号を用いて表すものに当たるとみなす。ただし、専門分野の用語の表記に合わせ、長音符号は用いても略しても誤りでないことにしている

  • 規格の用語および学術用語にない用語の語尾につける長音符号を省く場合は、原則として以下のルールに則る。

  1. その言葉が3音以上の場合には、語尾に長音符号をつけない。 例: エレベータ(elevator)
  2. その言葉が2音以下の場合には、語尾に長音符号をつける。 例: カー(car)、カバー(cover)
  3. 複合の語は、それぞれの成分語について、上記 a. または b. を適用する。 例: モータカー(motor car)
  4. 上記 a. ~ b. による場合で、長音符号を書き表す音、はねる音、およびつまる音は、それぞれ1音と認め、拗音は1音と認めない。 例: テーパ(taper)、ダンパ(damper)、ニッパ(nipper)、シャワー(shower)

つまり、「"ヴァ"みたいな仮名はなるべく使わないでね。長音に関しては、業界の標準に合わせてください。標準がない場合はお好きにどうぞ。ただし省く場合はルールを守ってね!」といった感じです。

業界の標準っていうのが曖昧で、例えば「インターネット」なんかは「インタネット」という人はいないのでわかりやすいですが、それ以外の大体の用語についてはどちらの表現もまかり通るものが多いです。

そんな感じなので、会社によって記述が違ったりするし、今でもサーバ/サーバーを文書に記述する度に議論が巻き起こったりしているのです。

なお、歴史的には、以前JIS規格では長音符号は原則省略するものとしていたそうです。ところが、平成3年に内閣より出された告示を受け、JISも長音符号を認める方向に転換したのだそう。そうして、そこから各企業が続々と長音符号をつけ始め、平成20年にはマイクロソフトも長音符号を復活させるようになり、今現在様々な表記がなされている、といった流れのようです。

車輌? 車両? 鉄芯? 鉄心? 常用漢字の使用

先ほどのJIS Z8301規格では、用語によって、常用漢字外を常用漢字に置き換えたり、簡単な語に言い換えたり、仮名書きを用いたりすることとしています。要約すると、以下のとおりです。なお、常用漢字はこちらで確認できます。

  • 用語の中の漢字が常用漢字表音訓欄にない場合には、意味が似た常用漢字で置き換えるか、仮名書きにする。
  • 用語の中の漢字が常用漢字表にあっても、その漢字が難しい字である場合には、音が同じで易しい漢字に置き換えるか、意味が同じで易しい言葉で言い換える。
  • 用語の中の漢字が常用漢字表にあっても、誤読のおそれがある場合には、その全部を仮名書きにする。

置き換えるべき代表的な例を、以下に挙げます。

車輌車両
沈澱沈殿
腐蝕腐食
反撥反発
醗酵発酵
褪色退色
間歇間欠
熔接溶接
煖房暖房
註文注文
醋酸酢酸
抛物線放物線
吃水喫水
坐礁座礁
梯形台形
矩形長方形
輻射放射
嵌合はめあい
尖頭値ピーク値
ひずみ
煉瓦れんが
坩堝るつぼ
漏洩漏えい
明瞭度明りょう度
鳥瞰図鳥かん図
汎用はん用
脆弱性ぜい弱性

なお、見出しにある「鉄心」に関しては、以前は"芯"が常用漢字ではなかったため、一度「鉄芯」から「鉄心」に漢字表記が変更されました。しかしその後、"芯"が常用漢字になったために、どちらも常用漢字であるにも関わらず、今現在も「鉄心」が正しい表記となっています。

等? など? 時? とき? 漢字と平仮名の使い分け

簡単な漢字であっても、状況によって漢字変換すべきかどうか、迷うことがあります。以下に、それぞれの使い分け方をまとめます。

使い分け方
等 など厳密なルールはない。常用漢字表では「等」の読みは「トウ」しかなく、「など」とは読まないので、「など」と読ませたいときは平仮名で記載する。
時 とき明確な"時間"や"時点"のときには、漢字の「時」を用いる。"場合"といった意味で使うときは、平仮名の「とき」を用いる。 漢字の例: あの時の出来事が忘れられない。 平仮名の例: わからないときは質問してね。
事 こと具体的な"事柄"や"出来事"を指して使うときには、漢字の「事」もしくは平仮名の「こと」を用いる。それ以外の抽象的な対象を指して使うときには、平仮名の「こと」を用いる。 漢字の例: お菓子を食べてしまった事、内緒にしてね。 平仮名の例: 今まで見たことのない笑顔。いつも彼女のことを考えている。
物 もの"物体"といった意味で用いる場合は、漢字の「物」を用いる。それ以外の抽象的な対象を示す場合は、平仮名の「もの」を用いる。 漢字の例: 物が落ちてくるぞ! 平仮名の例: 悲しいときには泣くものだ。ろくにものも言わない。
所 ところ"場所"としての意味で用いる場合には、漢字の「所」を用いる。"部分"や"特徴"、"場面"といった意味で用いる場合には、平仮名の「ところ」を用いる。 漢字の例: 郵便局を曲がった所に交番があるよ。 平仮名の例: 彼のどんなところが好きですか。あくびをしたところを見られた。
訳 わけ"理由"といった意味で用いる場合は、漢字の「訳」を用いる。直前の文とのつながりを表している場合や義務・断定に用いる場合は、平仮名の「わけ」を用いる。 漢字の例: 言い訳が得意な男。あの人には深い訳がある。 平仮名の例: わけがわからない。負けるわけにはいかない。泣くわけない。
筈 はず漢字の「筈」は常用漢字外なので、使わない。しかしながら、もし漢字で「筈」と表記した場合には、矢の端の弓の弦につがえる切り込みのある部分である、"矢筈"という意味になってしまう。
様 よう具体的な"様子"という意味で用いる場合には、漢字の「様」を用いる。それ以外の"〜ような"といった助動詞として用いる場合には、平仮名の「よう」を用いる。 漢字の例: 舞い散る花びらは雪の様です。 平仮名の例: 彼は大学で頑張っているようだ。後で困らないように、詳しく教えた。
為 ため常用漢字表では「為」を「ため」とは読まないので、「ため」と読ませる場合には、すべて平仮名の「ため」を用いる。
お陰 おかげうまくいった原因を示す場合には、平仮名の「おかげ」を用いる。
通り とおり"道"といった意味や、一通り・二通りといった場合には、漢字の「通り」を用いる。それ以外の同じくらいの状態や程度を示す場合には、平仮名の「とおり」を用いる。 漢字の例: 三丁目の通りは並木道になっている。一通り目を通した。 平仮名の例: 以前申し上げたとおりです。予想どおりの結果となった。
癖 くせ無意識に出てしまうような、偏った好みや傾向を指す、いわゆる「癖」を指す場合には、漢字の「癖」を用いる。それ以外の主体を非難する意図で用いる場合には、平仮名の「くせ」を用いる。 漢字の例: 寝癖がついてるよ。食べる前に匂いを嗅ぐ癖がある。 平仮名の例: お金持ちのくせにケチだ。男のくせにすぐ泣く。
内 うち厳密なルールはない。
方 ほう厳密なルールはない。「方」は「ほう」の他に「かた」とも読めるため、「ほう」と読ませたいときには平仮名で記載するべき。
度 たび厳密なルールはない。
共 とも"一緒に"の意味で用いる場合には、漢字の「共」を用いる。"同時に"の意味で用いる場合には、平仮名の「とも」を用いる。また、単語の後ろにつく場合も、平仮名の「とも」を用いる。 漢字の例: 彼女と共に、ディズニーシーへ行った。 平仮名の例: 掃除とともに洗濯もした。友達2人とも、頭がいい。
他 ほか厳密なルールはない。「その他」の読みは「そのた」となるため、「そのほか」と読ませたいときには平仮名で記載する。公用文では平仮名が用いられる。
毎 ごと常用漢字表では「毎」を「ごと」とは読まないので、平仮名の「ごと」を用いる。
付き つき"付属"といった意味で用いる場合には、漢字の「付き」を用いる。"〜につき"といった意味で用いる場合には、平仮名の「つき」を用いる。 漢字の例: 醤油付きの納豆。 平仮名の例: 大好評につき、セールを延長します。
上 うえ"上部"や"上方"、"レベルが上"といった意味で用いる場合には、漢字の「上」を用いる。それ以外の場合には、平仮名の「うえ」を用いる。 漢字の例: 上から声がした。この上ない喜び。 平仮名の例: 使用するうえでの注意。迷惑をかけたうえ、逃げた。
且つ かつ厳密なルールはない。通例では平仮名。新聞記事では平仮名が用いられる。
但し ただし厳密なルールはない。通例では平仮名。新聞記事では平仮名が用いられる。公用文では漢字が用いられる。
尚 なお常用漢字表では「尚」を「なお」とは読まないので、平仮名の「なお」を用いる。
並びに ならびに厳密なルールはない。通例では平仮名。新聞記事では平仮名が用いられる。
又 また厳密なルールはない。通例では平仮名。新聞記事では平仮名が用いられる。公用文では漢字が用いられる。
及び および厳密なルールはない。通例では平仮名。新聞記事では平仮名が用いられる。公用文では漢字が用いられる。
若しくは もしくは厳密なルールはない。通例では平仮名。新聞記事では平仮名が用いられる。公用文では漢字が用いられる。
故 ゆえ厳密なルールはない。通例では平仮名。公用文でも平仮名が用いられる。
有る ある有無を特に強調して表現するときは、漢字の「有る」を用いる。通常は、平仮名の「ある」を用いる。
居る いる存在を特に強調して表現するときは、漢字の「居る」を用いる。通常は、平仮名の「いる」を用いる。公用文では平仮名が用いられる。
無い ない有無を特に強調して表現するときは、漢字の「無い」を用いる。通常は、平仮名の「ない」を用いる。
成る なる厳密なルールはない。通例では平仮名。公用文でも平仮名が用いられる。
良い よい厳密なルールはない。通例では平仮名。公用文でも平仮名が用いられる。
し易い しやすい厳密なルールはない。通例では平仮名。
し難い しがたい厳密なルールはない。通例では平仮名。
言う いう実際に口に出して"発言"している意味を持たせる場合には、漢字の「言う」を用いる。それ以外は、平仮名の「いう」を用いる。 漢字の例: こんにちはと言いました。 平仮名の例: これはガパオライスという食べ物です。
行く いく実際に足を動かして"向かう"という意味を持たせる場合には、漢字の「行く」を用いる。それ以外は、平仮名の「いく」を用いる。 漢字の例: 公園に行く。 平仮名の例: 段々沈んでいく。
上げる あげる実際に物を上方に移動させる意味で用いる時は、漢字の「上げる」を用いる。それ以外は、平仮名の「あげる」を用いる。 漢字の例: ノートを本棚の上に上げる。 平仮名の例: 図書を貸してあげる。
下さい ください"物"を要求する場合には、漢字の「下さい」を用いる。"行動"を要求する場合には、平仮名の「ください」を用いる。 漢字の例: その資料を下さい。 平仮名の例: その資料を取ってください。
頂く いただく"物"を貰う場合には、漢字の「頂く」を用いる。"行動"をしてもらう場合には、平仮名の「いただく」を用いる。 漢字の例: 資料を頂く。 平仮名の例: 資料を取っていただく。
貰う もらう"物"を貰う場合には、漢字の「貰う」を用いる。"行動"をしてもらう場合には、平仮名の「もらう」を用いる。 漢字の例: 資料を貰う。 平仮名の例: 資料を取ってもらう。
致す いたす"結果を引き起こす"という意味で用いる場合は、漢字の「致す」を用いる。"する"の謙譲語として用いる場合には、平仮名の「いたす」を用いる。 漢字の例: 不徳の致すところ。致し方ない。 平仮名の例: お願いいたします。指示通りにいたしました。
出来る できる厳密なルールはない。通例では平仮名。公用文でも平仮名が用いられる。ただし、名詞として「出来」と使用する場合は、漢字を用いる。
御座います ございます厳密なルールはないものの、一般には平仮名で表記する。漢字で表記すると違和感を覚える方が多い。
かも知れない かもしれない厳密なルールはない。通例では平仮名。公用文でも平仮名が用いられる。
に過ぎない にすぎない厳密なルールはない。通例では平仮名。公用文でも平仮名が用いられる。

「こと」や「もの」のように、抽象的な対象を指した名詞は、形式名詞と呼ばれるそうです。

形式名詞はすべて平仮名を用いることがルールとなっているので、「具体的なら漢字」「抽象的なら平仮名」と覚えるといいかも知れません。

また、「見る/してみる」「行く/していく」「下さい/してください」「頂く/していただく」のように、「動詞の場合は漢字」「補助動詞の場合は平仮名」というのも一つのルールになっています。

最後に、どの語にも共通して言えることは、迷ったら平仮名を使ってしまって構わない、ということです。漢字表記が誤りになることは多くても、平仮名表記で誤りになることは実は少ないのです。

売上? 売上げ? 売り上げ? 送り仮名の付け方

一般に定められたルールはないですが、参考として公用文では、以下を使うルールとなっています。

明渡し預り金言渡し入替え植付け魚釣用具受入れ受皿受持ち受渡し
渦巻打合せ打合せ会打切り内払移替え埋立て売上げ売惜しみ売出し
売場売払い売渡し売行き縁組追越し置場贈物帯留折詰
買上げ買入れ買受け買換え買占め買取り買戻し買物書換え格付
掛金貸切り貸金貸越し貸倒れ貸出し貸付け借入れ借受け借換え
刈取り缶切期限付切上げ切替え切下げ切捨て切土切取り切離し
靴下留組合せ組入れ組替え組立てくみ取便所繰上げ繰入れ繰替え繰越し
繰下げ繰延べ繰戻し差押え差止め差引き差戻し砂糖漬下請締切り
条件付仕分据置き据付け捨場座込み栓抜備置き備付け染物
田植立会い立入り立替え立札月掛付添い月払積卸し積替え
積込み積出し積立て積付け釣合い釣鐘釣銭釣針手続問合せ
届出取上げ取扱い取卸し取替え取決め取崩し取消し取壊し取下げ
取締り取調べ取立て取次ぎ取付け取戻し投売り抜取り飲物乗換え
乗組み話合い払込み払下げ払出し払戻し払渡し払渡済み貼付け引上げ
引揚げ引受け引起し引換え引込み引下げ引締め引継ぎ引取り引渡し
日雇歩留り船着場不払賦払振出し前払巻付け巻取り見合せ
見積り見習未払申合せ申合せ事項申入れ申込み申立て申出持家
持込み持分元請戻入れ催物盛土焼付け雇入れ雇主譲受け
譲渡し呼出し読替え割当て割増し割戻し    

ら抜き言葉

「食べることができる」は短く省略すると、「食べられる」というかたちに直すことができますが、「食べれる」というかたちに直した場合、それは"ら抜き言葉"といわれ、これまで間違いとされてきました。

間違いとされてきた理由は、「文法的に誤っている」というものが一般的ですが、文法というものは時代とともに変わりゆくものであり、ら抜き言葉も現代では一般的になってきたように思います。また、「ら抜き言葉」が歴史的に古くから使われている地方もあるそうです。

ら抜き言葉の登場によって、「〜られる」の意味である「受身」「自発」「尊敬」「可能」のうち、「〜れる」の場合だけ「可能」の意味に限定することができ、便利になったのは紛れもない事実です。

そういった観点から、私はら抜き言葉はもはや間違いではない、と思っています。大事なのはら抜き言葉を批判することではなく、すべて知ったうえで受け入れて使うことだと思っています。

ですから私は、批判を承知でら抜き言葉をこれからも使い続けます。

ですが、万人受けしたい人は、使わないことをお勧めします。

疑問符「?」、感嘆符「!」の後のスペース

こちらの記事を読むまで、気にしたことはなかったのですが、疑問符「?」や感嘆符「!」の後に全角スペースを入れることで、文章が読みやすくなります。

詳しくはこちらを読むことをお勧めしますが、きちんとしたルールもあるそうです。

メディアによって全角スペースを入れたり、半角スペースを入れたり、スペースを入れなかったり、まちまちですが、読みやすさを重視して入れることを私はお勧めします。

まとめ

ブログやTwitterといったWebメディアに関して言えば、厳密な正しい表記よりも、読みやすさが大事だったりするので、正しい表記を知っておくことは重要ですが、必ずしも従わなければならないというものでもないと思います。

また、言葉は生き物ですので、今は間違っているとされる文法も将来正しくなったり、環境によって一般と違う日本語表記の文化があったりします。

臨機応変に、その場にあった伝わりやすい文章を書けるようになりたいものですね。

筆者について

フリーランスエンジニアとして活動している、「もりやませーた」です。

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