綺麗に死ぬITエンジニア

私が新卒入社2年弱でSIerを辞めてWeb業界に転向した理由

2015-01-06

厳密には2015年1月末までなので、まだSIerの会社にいるのですが。

前置き

2015年1月末を以て、SIer(として)の(面もある)現会社を退職します。

SIer以外の業務で若い人材を低賃金・重労働で消耗していく、超ブラックな部分のある会社だったってことはこの際なしにして、SIerで勤めている上で思うことがいくらかあったので、書き残します。

もしかしたらSIer全般ではなく、今回の件にだけ当てはまることを書くかも知れませんが、あしからず。

SIerって?

具体的な話に入る前に、念のためSIerとは何か、一体SIerとして今までどんな仕事をしてきたのかを説明します。

SIerは「エスアイアー」と読み、システムインテグレーターの略語だとされています。

システムインテグレーター(英: System Integrator、通称:SIer)は、個別のサブシステムを集めて1つにまとめ上げ、それぞれの機能が正しく働くように完成させる「システムインテグレーション」を行なう企業のことである。情報システム(情報技術産業、IT業界)、軍需産業において名乗ることが多い。

引用元:システムインテグレーター - Wikipedia

まあ、こんなこと言われてもピンと来ないですよね。

簡単に言うと、パソコンなんてさっぱりわかんねえ機械オンチな会社さんに、パソコンを納品して、メールとか使えるようにしてやって、わかんないことあったら電話で聞くよ!的な仕事をしている企業のことです。

主にメールや共有ファイル、経理システムや勤怠システム、グループウェア(会社専用SNS的なやつ)を導入したりします。お客さんによっては専門的なシステムを要求してくるところもあるので、要望に応えるシステムを実現するためのコンサルティング業務が主であり、やれ技術者!やれシステムエンジニア!とはいいつつ、営業みたいな仕事が多いです。

今の会社はソフトウェア開発は全くやっていないため、お客さんから欲しいシステムを聞きだし、それに見合うソフトウェアをメーカーから買ったり、他の会社に外注したりしていました。いわゆる、"元請けSIer"でした。

入社した経緯

私は北海道にある旭川工業高等専門学校、俗にいう旭川高専の電気情報工学科を卒業し、新卒として東京にある今の会社に入社しました。高等専門学校(高専)っていうのは、5年間通う高校みたいなもので、その名の通り高校と専門学校を足したような学校です。

一応、電気情報工学科は情報分野の学習も行うため、ITについては曲がりなりにも理解して就職活動していたつもりでしたが、今考えれば就活当時はIT業界についての知識は皆無で、SIerなんて言葉どころか、システムエンジニアが一体どういった仕事をしているのかさえ、具体的には理解してなかったように思います。

そんなこんなで、いわゆる専門学校卒の学歴で、大した知識もなく、ただただ就活で内定をくれた今の会社に何も考えずに入社しました。

SIerとして働いてみた結果

結論から言うと、新卒の就職先としてSIerを選んだのは、就活当時の選択肢の中では最も良い選択だったと思っています。

しかしながら、ある程度技術水準が高い技術者にとって、SIerで居続けるのはデメリットしかないと思います。

理由は後述します。

良いSIerと悪いSIer

これは私個人の偏見を持った考え方かもしれませんが、SIerという仕事は極めてネガティブな仕事だと思っています。

というのも、ユーザー(お客さん)からみた良いSIerと悪いSIerの違いって何だろう、と考えたときに、ネガティブな面が強いのです。

例えば、車メーカーを考えてみたとき、良い車メーカーと悪い車メーカーの差って、作った車の性能の良し悪しに左右されると思うんです。燃費が良いだとか、加速が早いだとか、見た目がかっこいいだとか、安全性能が高いだとか。そして、その次にお金の問題。いかに価格が安いか。

いくら不況だからとはいえ、車を買うときに、性能を比較しないで買う人はいないと思います。

なので、車メーカーは、車の性能を上げて、付加価値をつけることにプライドを見出します。また、価格を抑えるにしても、どれだけ性能を落とさずに価格低下を実現できるか、というところに心血を注ぎます。

これは、技術者にとって、至極クリエイティブでやりがいのある仕事になり得ます。

しかし、SIerの場合はそうはいきません。

SIerは車ではなく情報システムを作ります。システムの性能の良し悪しは、ハードウェアおよびソフトウェアの良し悪しで決まります。ハードウェアはハードウェアメーカーから買い、ソフトウェアはソフトウェアメーカーから買ったりソフトウェア開発会社に外注したりするため(今の会社は完全外注)、SIerの手腕によってシステムの性能を上げるのはほぼほぼ不可能です。上げられたとしても、ユーザーへの実感は殆どありません。ハードウェアメーカー並びにソフトウェアメーカーに頑張ってもらうしかないのです。

となると、ユーザー視点では、いかに価格が安いか、という点だけが重視されがちになってきます。

が、SIerの場合、価格を下げるには、外注している業者への費用を下げるか、自社の利益を削るより他ありません。つまり、外注している業者、多くの場合はソフトウェア開発会社に安い価格で仕事を半ば無理やり押し付けるという横行がしばしば見られるようになります。しかし、ソフトウェア開発会社への費用を節約するということは、システムの性能を下げる要因になりかねません。そして、自社の儲けも大して上げることができなくなり、技術者に対する給料の上げ幅も厳しいものになってきます。

つまり、良いSIerは稼げないのです。

逆にユーザーからみて悪いSIerであればあるほど、SIerは儲けを上げることができます。しかし、悪いSIerは、今の時代に新規に案件を獲得することができないため、長い目で見ると、これまたいずれ儲けを下げることになります。

SIerで働く技術者

世間一般に、SIerで働く技術者はガラパゴス化していてスキルが低いと言われています。

なぜなら、案件を受注して、自社でできない工程があった場合、それを丸々他社に外注すればいいし、外注するための仕組みが既にできあがっていて、一切技術について考えることがなく実現してしまうからです。

ユーザーからの要件を細分化して外注するマネジメント能力に長けている人はいても、実際に最適な方法で開発できる技術者が殆どいないのが現状です。外注でも何でもとりあえず実現できれば、どうでもいいや、みたいな感じです。少なくとも私の周りは。

また、ある程度スキルを持ってしまうと、その人に他の人にはできない雑務や質問が殺到してしまい、成長できる機会を多く失ってしまいます。

まあ、一言で言ってしまえば、クリエイティブじゃない、ってことです。

新しい技術にも消極的、安く簡単に仕上げることを一番に考えます。また、クリエイティブじゃない環境に慣れてしまい、しばしば怠惰に陥ります。

そして、クリエイティブな人は、そこからいなくなります。他にもっとやりがいのある仕事があって、なおかつ自分がそれに挑戦できるだけのスキルをもっていることを知っているから。

こうして、SIerで働く技術者はどんどんガラパゴス化していき、どんどんスキルが低い人が集まっていく、負のスパイラルに陥ります。

よって、成長したいと思うなら、SIerで怠惰に働き続けるのは、決して自分のためにはならないと確信しました。

新卒入社がSIerでよかったと思う理由

前述のとおりSIerで働き続けるのは自分のためにならないとはいえ、新卒のIT業界の右も左もわからない状態で、SIerに就職するのは、私は悪くない選択だと思います。

というのも、良くも悪くも資格主義だったり、技術について勉強する環境があったりするので、努力次第では色々な知識を身につけることができます。また、下請けや元請け会社といった関係で、同業他社が割と近いところで見られるため、将来自分がなりたい姿をみつけるには、とてもいい環境といえます。

そして、常日頃から自分の技術力を向上させるために色々なことを勉強する習慣をつけておけば、転職も割とスムーズにできると思います。

まあ、新卒入社の段階で既に転職を意識しているのはどうかと思いますけどね。失敗しても大丈夫くらいな感じで…。

クリエイティブなところで働きたい!

と、思って、次はWeb業界を選択しました。

転職活動の際には、Web業界に的を絞り、複数社面接を受け、自分の納得のいく会社に決めました。次の内定先は、以下の点が決め手で決めました。

  • 自社Webアプリケーション開発をしており、その製品のクオリティが高い
  • 従業員数十数名で、風通しが良い雰囲気だという印象を受けた
  • 間違いなく成長できるという確信が持てた
  • 自分の今後成長していくべき道筋を示してくれた
  • 社長がいい人そうだった

転職を決めたとはいえ、私、未だ弱冠22歳。大学に行っていれば、もうすぐ新卒で就職する時期。

人生これからなので、頑張っていきます。